ガスコンロとIHクッキングヒーターのメリット・デメリット
豊田 芹華
ひと昔前、台所にはガスレンジが置いてあることが当たり前の風景でしたね。
現代のキッチンには、IHクッキングヒーターが設置されているご家庭も多いのではないでしょうか。
新築やリフォームの時、たくさんあるメーカーやグレードの中から一点を選ぶのも大変な作業ですが、
「ガスか、IHか」というのも大きな悩みの一つですね。
そこで、それぞれのメリット・デメリットを書き出してみたいと思います。
ガスとIHクッキングヒーターの大きな特徴としては、ガスはご存じの通り、ガス管を通して流れてくるガスに着火し、火力で加熱して調理します。
炒め物や中華料理は、ガスの大きな火力を使うことで美味しく仕上げることができます。
ですが、火の取り扱い・ガスの取り扱いには十分な配慮が必要です。
IHクッキングヒーターの「IH」は「Induction Heating(誘導加熱)」の頭文字を取ったものです。
IHクッキングヒーターでの調理はこの「誘導加熱」によって行われます。
火やガスは使わず、安全機能が充実しているため、お手伝いをしたいお子様やご高齢の方でも安全に調理することが可能になります。
また、トッププレートに凹凸がないので、使用後のお手入れも断然楽に感じるでしょう。
次に、4人家族で標準的なメニューを毎日調理した場合のIHクッキングヒーターの電気代は、1ヶ月約900円程度。
都市ガスの料金をもとに試算したガス代は、1ヶ月およそ790円という資料があります。
金額だけを見るとガスの方がお得に感じますが、オール家電住宅や新電力を利用していて、夜間使用割引などの契約プランによって、
料金のお得な時間帯に使用が偏っていれば、都市ガスの基本料金が安かったとしても、相対的にはIHのほうが電気代の方が安かったという結果もあります。
使用料の比較については、ご契約内容や地域によって差もありますし、家族構成によって使用頻度の高い時間も異なります。
子どもの成長によっても数年単位で変動していくということも念頭に置き、
ざっくりとした差額と「ガス代が減れば電気代が増える」ということだけを把握しておく程度で大丈夫でしょう。
断然IHの方がお得?
これまでのお話で、IHの方がお得になるのではないかと思われていることでしょう。
確かに、
・トッププレートがフラットで掃除やお手入れが簡単で清潔
・火を使わないので、部屋に熱気が充満しにくく、夏場の調理も快適
・コンロの使用に比べて安全性が高く、お子様が近くにいる場合や、子どもお手伝い、ご高齢者の使用においても、安全で使いやすい
・熱効率が高く熱が逃げていかないので、例えば、同じ条件で「お湯を沸かす」という作業だけを見たとき、ガスコンロよりもIHの方が短時間でお湯を沸かすことができる
などの利点を挙げることができます。
しかし、逆の不便さも知っておくことが大切ですね。
安全性が高くても、使い方を誤れば危険なことはあります。IH使用直後のトッププレートは高熱である表示や調理器具がトッププレートから離れてしまった場合、
音や表示で警告がなされていても、何かの拍子に素手で触れてしまえば、火傷をしてしまうこともあります。
次に、IHは電磁調理器であるため、使用は専用の調理器具に限定されます。
近年では、幅広く対応した調理器具も増えてきていますが、メーカー商品は価格が高く、すべてを買い揃えるというのも、それなりの出費となります。
また、一番の違いであり、人によっては不便さを感じる点が、炙りができないといことです。
鍋底がトッププレートから離れると、熱の伝達が途切れてしまいます。
鍋を振って調理したり、直火を使って炙ったりという調理方法はできません。
最近では、鍋振りに対応したIHも発売されていますが、未対応のIHではこれを不便に感じる方が多いかもしれません。
そして、一番選ばれる理由で多くなっているのが、停電時には使用できないことです。
では、ガスのいいところは?
先ほどの、IHの不便さに挙げた「鍋を振って調理できない」「炙りができない」「停電時は使用できない」が可能になる点です。
また、細かい火力の調整ができるのもガスコンロならではの利点です。
IHはトッププレートのお手入れが楽だと挙げましたが、ガスコンロも五徳が鍋を支えているのでトッププレートが傷つきにくく、汚れにくい特徴があります。
お手入れの面では、近ごろのガスコンロも五徳を外せば、天板がフラットな仕上げになっているものも多くありますので、大きな差はないかもしれません。
デメリットは、火力から発熱する熱気によって、
夏場の調理はひと際熱く感じますし、火の取り扱い・ガスの取り扱いには十分な配慮が必要になります。
IHとガスのメリット・デメリットについて挙げてきましたが、使用者の価値観によっては、違う感想もあることでしょう。
知らずに購入し、あとで「困った」とならないためにも、大切なことは、両方のメリット・デメリットを知っておくことだと思います。
そして、良い物が必ずしも必要な物とは限りません。
ご自身を含むご家族の要望を叶えられる物を選択し、そのうえで、ご家族の成長によって在り方が変わっていく事を考慮して、最終的な判断をすることで、よりご満足いただけるのではないかと思います。
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